バッドフィンガー通信 Badfinger

カテゴリ: ロン・グリフィス


デモ・セット 1  を予定しているようです。 
でも「その前に過去の2枚のCDを完売しなければならないので、まだ買うのを迷っている人は買うことによって次の作品が世に出る助けになります」 

みたいなことをロン&ダンさんが訴えています。 
 
 
  
 The Iveys Anthology Vol. 3 (May 31, 2022) 

 


「その日アイビーズがアップルの地下でリハーサルしていた時、誰かがやって来て屋上でビートルズが演奏していると知らせてくれたんだ。それでみんなで急いで見に行ったんだけど、もう警官に演奏を止められた後だったよ」 
 
 
 
 [通信13号] 映画「レット・イット・ビー」の若者 

 

 
アイビーズという名前はロン・グリフィスのアイディアが採用されたわけだが、そのアイビーズと改名される時のバンド名はザ・ワイルド・ワンズといった。 1964年のことで、その時のメンバーは、ピート・ハム、ダイ・ジェンキンス、テリー・グリーソン、ロン・グリフィスの4名。 
 
初代アイビーズのドラマーのテリーは1962年にロンが初めて参加したバンド、ザ・ジャガーズのドラマーだった人。ロン加入後しばらくして辞めたが、ロンは1964年にワイルド・ワンズに移るまで在籍していた。テリーは仕事の勤務時間が早朝、昼間、夜間と週ごとにシフトするため、夜間勤務の週はバンド演奏ができなくなるという問題が生じ、アイビーズでもロン加入後しばらくして脱退した。そこで新たなドラマーとしてスカウトされたのがマイク・ギビンズだった。 
 
アイビーズは1967年にダイ・ジェンキンスとトム・エバンスが入れ替わったので、最初から最後までアイビーズにいたのは6人中でピートとロンだけ。特にロンは、アイビーズと改名する直前に加入して、アイビーズと名前をつけて、その名前を再び変える直前に脱退(レコードは改名後にも収録)という、アイビーズそのものだったことがわかる。 
 

 
[平川清圀による解説]   タイムまでがLP盤 AP-8719のライナーに載っているもの。 
[ロンによる解説]   その後にロン・グリフィスによる曲解説(1984-90年に発行されていた The Badfinger Connection誌 のインタビュー記事を、1989-92年に発行していた バッドフィンガー通信 に載せた時の原稿を基に加筆し、画像も追加)。 
Iveys - AP-8719 ii
シー・ソー・グランパ  
ロックンロール・ミュージックやスウィート・リトル・シックスティーンでおなじみのR&Bの王様、チャック・ベリーを思わすようなロックン・ロール・ナンバーで、間奏のギターのアドリブ等、まさにその感じです。(もっとも、チャック・ベリーのギターよりは、ズーッと上手いようですが・・・) 比較的、静かなメイビー・トゥモロウからはとうてい信じられないような素晴しい迫力で、アルバムの最初を飾るにはふさわしいナンバーです。(3'35'')
[ロン]   マネージャーのビル・コリンズのことを歌った曲だろうって? 面白い意見だね。でも違うんだよ。当時住んでいたところのすぐ近くに公園があって、ピートや僕たちみんなでブランコなどの遊具に乗っていたんだ。そしたら老人がやってきて突然ピートを叱ったんだ。 「シーソーから降りなさい。それは子どもたちが遊ぶために置いてあるんだから」ってね。録音は Trident Studios 。ライブのノリでやろうってことで、ステージでの演奏そのまま(演奏しながら歌う)のスタイルで録音したんだよ。プロデュ-スは Tony Visconti だったね。  
See-Saw Grampa
 
美しく青く  
ちょっと聴くとビートルズではないかと思う程、ビートルズの中期の作品に似たナンバーで、ドラムのスティック・ワーク、ハーモニーのとり方等、全く、良く似ているとしか云いようがありません。間奏のギター、バックのストッリングスが実に良い雰囲気を出しています。(2'39'') 
[ロン]   トムの曲で、Trident Studios で Tony Visconti がプロデュースしたものだけど、特に思い出話はないね。  
Trident Studios
 
いとしのアンジー  
R&Bスタイルのスローなナンバーで、一見、単調な感じですが、何か引き込まれるような感じのする味のあるメロディーを持った曲です。唄はそうでもありませんが、全体的にはこの曲も、一時のビートルズを思わすようなサウンドを持っています。(2'38'') 
[ロン]   当時のガールフレンドのことを歌った曲なんだ。彼女のミドルネームが Angela ってわけさ。ある晩のこと、ユーストン駅で彼女を見送ったその直後に書いたんだ。詳しく言うと、家に戻って録音ルームを覗くと誰もいなかった。いつもだとピートがずっと使っているんだけどね。それで、その時の彼女への気持ちを録音しておこうと思ってね。次の日、ピートに聴かせたら気に入ってくれたよ。中間部のギターのところはピートのアイデアだよ。そこは彼の兄のジョンの影響を受けてるね。 その後 彼女とは結婚したんだけど、結局離婚。デニー・レインがこの曲を好きだって聞いたことがあるよ。これも Trident Studios で Tony Visconti と録音したものだね。  
Euston Station
 
シンク・アバウト・ザ・グッド・タイムス
  
ギターにファズ・ボックスをつけて、シャドウズの「ボンベイ・ダック」で聞かれたような音でリズムをつけ、実に単調なドラムのリズムと、これ又単調なメロディーを使って面白い雰囲気を出しているナンバーです。エンディングの繰り返し等、一頃ならば「LSDミュージックの影響を受けて・・・」等と云われそうな雰囲気を持っています。(2'20'') 
[ロン]   マイクはみんなから一曲書けよっていわれてたんだ。で、これがその成果。僕がハーモニーをつけている。あのネジを巻いているような音は実際にピートがスクリュー・ドライバーを使って出した音だよ。これも録音は Trident Studios だったね。プロデュースはたしか Mal Evans だったと思うけどな。  
Mal Evans
 
昨日はもどらない  
ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」に収められていた「シーズ・リーヴィング・ホーム」に良く似た雰囲気を持ったメロディアスなナンバーで、歪んだブラスの音と、ハープが上手く使われています。(2'58'') 
[ロン]   ピートの曲。当時のアップルではセッション・ミュージシャンに費用をかけてくれなかった。というわけで、ところどころに薄っぺらいブラス・ラインを使うのがやっとのことだったね。 Tony Visconti と Olympic Studios で録音。  
 
フィッシャマン  
''昨日はもどらない'' のエンディングのハープの音の中から波音が入り、バンド・ブランクなしにこの曲へ続いていますが、この曲も、かなり強くビートルズを感じさせます。こうして聴いて見ると、彼等の音楽はかなり強くビートルズの影響を受けているようですが、それは「アップル」に入ってからのものではなく、もっと以前のもののようです。(3'08'') 
[ロン]   トムの曲で、フルートはまったくイマジネーションのかけらもないセッション・ミュージシャンたちが吹いている。砂の上を歩くようなシャカシャカした音は、僕が口で出したんだよ。 
 
メイビー・トゥモロウ  
先程から、何度も書いたように、彼等のデビュー・ナンバーで、イギリス、アメリカに於いては大ヒットした曲です。日本では3月にリリースされたものの、あまり人気が出ませんでしたが、きれいなメロディーを持った親しみ易いナンバーで、そのメロディーがバックのストゥリングスによって見事に生かされています。(2'51'') 
[ロン]   この曲にはヒットするためのあらゆる要素が含まれていたけれど、なぜかイギリスではパッとしなかった。僕が思うには、演出の面で何かが欠けていたんじゃないのかな。Tony Visconti のね。  
Tony Visconti 
 
サリー・ブルー  
ここまでに聴いて頂いたナンバーとは、ヤヤ、感じの違ったもので、かなり彼等独自のものが強く感じられますが、それでも、ヤハリ、ところどころにビートルズの影響が見られます。ここでも、ファズ・ボックスを使ったギターが効果的に使われています。(2'43'') 
[ロン]   Tony Visconti が Olympic Studios でプロデュース。僕のリードにピートがデュエットをつけている。気取ったようなサウンドにはしたくなかったんだけど、ピートがうまく僕の声をカバーして、ロックでソウルな感じにしてくれたね。 トムもあちらこちらにトップ・サードをつけているよ。  
Olympic Studios
 
アンジェリーク  
前の曲とはガラリと雰囲気が変って、静かな美しいバラードですが、バックも極端に押えて、「実に良い感じ!」と云ったところです。たった一回だけ入る牧歌的なフィーリングのあるトランペットの音色が大変、印象的です・・・。そう云えば、ビートルズも「ペニー・レイン」でこんな感じのトランペットを使っていましたが・・・。(2'26'') 
[ロン]   トムの作品で Olympic Studios でカット。僕の Dear Angie と この Angelique とはなんの関係もないよ。  
 
愛のとりこに  
ちょっとボードビル調の感じがあるナンバーで、彼等は唄声を歪ませてかなりその雰囲気をねらっているようです。全体としては「ホエン・アイム64」そして、途中に「イエロー・サブマリン」と全く同じ感覚でセリフが入ると云う面白いナンバーです。(2'25'') 
[ロン]   ピートが書いた曲。彼は僕と同じようにジャズやブルースに熱狂していたんだよ。彼の兄ジョンはスウォンジー近辺でトランペット奏者だったんだ。この曲はトラッド・ジャズ感覚のスウィング風に演奏しているんだけど、それはデュエット・ギターや最後の数小節にはっきりと現れているね。  
John Ham ad
 
ノッキング・ダウン・アワ・ホーム  
かなり時代がかかったバースで始まり、その後にビギン調のハワイアン的で大昔の流行歌的な雰囲気を持った曲が続く、と云ったおかしなフィーリングを持ったナンバーで、別にノベルティー・ソングと云う訳ではないのですが、あまり不思議な・・・と云うよりも時代がかったものが出て来る為、思わず笑ってしまうような感じです。それにしても如何にビートルズの影響を受けていると云っても、デビュー・アルバムでこれだけ遊んでいるグループは珍しいと思います。恐らく、それだけ実力があるのでしょうが、ビートルズの「アップル・レコード」ならでは出来ぬ事でもあるでしょう。(3'42'') 
[ロン]   ピートはビートルズにとても影響を受けていて、たとえば She's Leaving Home なんかにね。その影響の結果がこの曲だね。Olympic Studios で録音。  
 
アイヴ・ビーン・ウェイティング  
かなり重い感じのイントロから始まったメロディーは、ゾンビーズの「二人のシーズン」ではないかと思うような出だしですが、後はかなり雰囲気も変って、途中からはニュー・ロック的な感じになって来ます。それにしても、12曲聴き終って、実に色々な事の出来るグループだと云う事に驚かされます。(5'13'') 
[ロン]   ピートの曲。不思議なことに当時はオリジナルを作っても、デモ・テープにこそ録音するけど、ライブではほとんどそれを演奏しなかったんだ。みんなスタンダード曲をロックにアレンジしたようなものを聴きたがっていたんだよ。ライブ・バンドのサウンドはレコーディング・バンドのサウンドよりも遥かに脂っこくて俗っぽいものだったしね。この曲もライブっぽくやりたかったんだけど、僕が思うには、ピートも同じだと思うけど、まったく不熱心なある有名なプロデューサー(グリン・ジョンズ)のおかげで、そのようなサウンドにすることはできなかったね。  
 
 
 
CDのボーナス曲など 
 
No Escaping Your Love  
[ロン]   トムが書いた曲。これもとてもキャッチーだね。当時僕たちはシングル用の曲を録音してはアップルに提出していたんだ。ピートのピアノ・ソロはハーフ・スピードで録音。だからチャップリン風だね。たしか Mal のプロデュースでロンドンの Morgan Studios で録音したはずだよ。  
Morgan Studios 1969
 
Mrs Jones  
[ロン]   これもシングル用に作った曲だね。 ある夜、眠れなかったので軽く夜食を作っていたら、ピートがなんか興奮して入ってきたんだ。いい曲ができたからちょっと聴いてよ って。聴いたらコマーシャルな曲で、僕もちょうど眠れなかったから手伝うよ って。それでオーバーダブを手伝ったんだ。 ポール・マッカートニーの感想は 「なんか最後のところのサウンド、ペイパーバック・ライターみたいだな」 

And Her Daddy's A Millionaire  
[ロン]   ダブル・トラックのベース・ラインをフィーチャーしている。ベースのリフはミスったところに重ねるように録音したんだよ。  
 
Storm In A Teacup  
[ロン]   Morgan Studios で録音したんだ。当時としてはコマーシャルなサウンドだったね。Wall's Ice Cream のEPで使われたもので、トムの作品。プロデュースは Mal Evans 。  
Wall's Big Wiz
 
Arthur 
[ロン]   トムのシングル用の曲。 僕は特にいい曲だとも思わないけど。  
 
 
Come and Get It  
[ロン]   ポール作曲。当時、Disc & Music Echo誌(1969/07/05号)に掲載された僕のインタビューを読んだポールは、僕たちがアップルに軽視されていると感じたことに驚いたんだ。それでマネージャーのビル・コリンズにシングル用に一曲あるけどどう? って連絡してきたんだ。さらに、もしよければ映画用にあと2曲やってみないか? って。ポールはその映画の仕事にはあまり乗り気じゃなかったみたいなんだ。Abbey Road で録音した僕らのバージョンでポールはタンバリン、僕はベースと低音のハーモニーを担当したよ。  
 
Crimson Ship  
[ロン]   この曲の録音時は運悪く水疱瘡で寝ていたから、参加してないんだ。  
 
Midnight Sun  
[ロン]   ピートの曲。デモ録音の段階では僕がリード・ボーカルだったから、本番でも当然僕が歌う予定だったんだけど、水疱瘡にかかっちゃって、残念ながらデモにしか参加できなかった。  
 
Rock of All Ages  
[ロン]   トムの曲。この時もまだ水疱瘡で不参加。  
 
Carry On Till Tomorrow  
[ロン]   Abbey Road でポールがプロデュース。映画 マジック・クリスチャン用の3曲目だね。僕が関わってきた曲の中でもうまくプロデュースされたと思う数少ない曲の一つだよ。他の曲はあまりよいプロデュースではないと僕は考えているんだ。サイモン & ガーファンクル風だよね。 僕は曲を通してトップ・ハーモニーをつけているよ。  
Abbey Road Studios
 
Walk Out in the Rain  
[ロン]   ピート作曲で、Trident でほぼ2時間で収録。この曲には僕も参加してるよ。  
 
Give It a Try  
[ロン]   Apple Studios で収録。これはヒット・シングル狙いがちょっと意図的すぎというか不自然だったね。アップルは結局シングルとしては発売しなかったんだけど。中間のバラードのところ(we can take it と叫ぶ前の部分)は僕が歌ってる。あと、ハーモニー・ラインもね。 [Disc & Music Echo誌に掲載された Ron のインタビュー1,2 にあった、「何回もシングル用に曲を書いて提出しても、その度に不十分だと言われて送り返された」曲の一つ。同じインタビュー3,4,5,6で トムも、アップルはバンド用の車や機材など僕たちが思っている以上のものを与えてくれたけど、今必要なのはレコード発売なんだ。それがヒットしようがしまいがとにかくレコードを出してもらいたい と語っている]  
Apple Studios
 
The Who - Mary Anne with The Shaky Hand [アップルはアイビーズにこの曲をカバーさせようとしていたらしい]  
 
 
[プロデューサー名など一部にCDなどの表示と異なる部分もあるけど、どちらが正しいのかはわかりません]  
 
 
 
 アイビーズ / メイビー・トゥモロウ AP-8719 ライナー 

 

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