こんにちは、リード・ケイリングです。きょうは私が臨時でこのコーナーを担当します。まず最初はアメリカのミルウォーキー在住の私からのお便りです。
「バッドフィンガー通信のみなさん、こんにちは」
バッドフィンガー通信のみなさんはいないけど、こんにちは。
「私はこれまでたくさんのバンドで演奏してきたわけですが、その中でも音楽的に一番充実していたのはどのバンドでしょうか?」
って、こんな感じでやればいいの? 好きにやってもいいんだよね? じゃ、始めます。
やっぱり間違いなく、バッドフィンガーの時だね。あれはすごかった。ガレージバンドのようなエネルギーがあった。やってて楽しかったし、サウンドはもちろんのこと、その時経験したすべてのことが今でも忘れられないよ。バッドフィンガーのツアーに参加した経緯も言った方がいいいの?
あ、やっぱ言うんだ。参加した経緯はね、当時バッドフィンガーはミルウォーキーにいたんだよ。トム・エバンス、マイク・ギビンズ、ボブ・ジャクソンの3人だね。彼らのマネージャーから電話があって、ツアーのためにギタリストを探しているとのことだった。興味があるかと聞かれたからぜひやりたいと答えたんだ。ずっと前からバッドフィンガーのファンだったからね。すると彼はスライド・ギターを弾くかどうか聞いてきたんだ。だから正直にスライド・ギターはやらないと答えると会話が止まってしまったんだ。
不採用かな? と思うだろ。ところがどっこい、なんとか話を続かせようと考えてたら閃いたんだ。カリフォルニアの知人はスライド・ギターの名手で元シカゴのドニー・デイカスだというと、彼は一緒にやってくれると思うか? という方向に会話がシフトしてきた。で、最終的には私と一緒なら必ずやりますと答えて、実際にそうなったというのが経緯だね。
ここでちょっとドニー・デイカスのことを紹介しますよ。彼はシカゴにいたことは有名だけど、その前にはスティーブン・スティルスと一緒にやってたんだね。それから映画にも出演してるよ。何かのバンドのツアー・メンバーで来日したこともあるらしいしね。 曲いってみます? 1976年の ドニーとスティーブン・スティルスとの共作曲でドニーも一緒に歌っている Closer To You と、1979年のシカゴ時代にそれを再録音した Closer To You 、そして1979年の映画 Hair のドニーが歌ってるシーンです。
バッドフィンガーでツアーしている時の出来事を話そうか? 私はよく肌触りのいいサテンのズボンを履くんだけど、その時はラインが目立たないように下着はつけないことにしていたんだよ。どこだったか場所は忘れたけど、アンコールでステージに勢いよく飛び出したとき股を開きすぎたのかビリっと破れてしまったんだ。腰のバンドのおかげでかろうじて露出はしなかったけど、その破れたズボンは中西部のどこかのクラブの壁に今でもぶら下がっているとかいないとか。
同じようなことは続くものでね。同じズボンをもう1組持ってたんだけど、その時はショーが始まったばかりの2曲目の演奏中だった。隣に立っているギターのドニーとちょっとじゃれ合ってね。空手のマネをして右足でキックをしたらまたズボンが破れちゃってね。ドニーだけに見えるようにお尻を向けたら、彼は大笑い。1時間半の間ずっと股間を隠すようにギターを低く持って、客席には絶対に後ろを見せないように演奏し続けたんだよ。
ツアーが終わってどれだけ経ったか覚えていないけど、一度トムから国際電話があったよ。彼はすごく盛り上がっていて、もう一度ツアーに行く気があるかって言うんだ。それは場合によっちゃ行ってもいいけど、前回のツアーでの私たちのパフォーマンスは実際にもらった報酬の少なくても2倍の価値はあると思うからね。また同じような条件なら無理だなぁと答えるとトムは「確かにそうなんだよなぁ」って。その次はなかった。それが最後。それからどれだけ経ったか定かではないけど、トムと私の共通の友人から電話があったんだ。「リード、座って落ち着いて聞いてくれよ。酷いニュースがあるんだ」と。どうしたの? と聞くと、「きのうトムが逝ってしまった。首をつって」
ジム・クロウチの飛行機事故の話もあるんだけど、バッドフィンガーは関係ないから簡単に済ませちゃうけど、いい? グラスルーツにいた時、ツアーの途中で小さな空港に着いたんだ。そこにはチャーター便が一機とレンタルのステーション・ワゴンが一台しかなかったんだ。そこから北に130km移動したかったんだけどちょうどそこに居合わせたのがジム・クロウチのツアーの一行。ジムとグラスルーツは同じレーベル所属だったんだけど、向こうは南に飛びたがっていた。当時はまだジムよりもグラスルーツの方がビッグだったのでその日最後のチャーター便を譲ってもらおうとしたけど、最近のヒット曲は俺たちの方だと応じてもらえず、コインで決めることになったんだ。私がポケットから25セントコインを出し、そのコインの裏表でジム側が勝ち、飛行機は南へ、私たちはワゴン車で北へ向かった。ジムたちの墜落事故のニュースを聞いた時はショックだったね。
最後に、以前出演した番組を紹介してお別れです。これを見れば私の経歴が全部わかっちゃうよ。バッドフィンガーのことは ここから だよ。ではまたね。
Reed Kailing: A Life In Music
from the Hardy Boys to the Grass Roots, Beatlemania, and beyond... Badfinger
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